消化管ホルモンの関連性
運動をした直後に食欲が低下することは、多くの方がすでに経験しているかもしれません。
これは、運動によって交感神経が活性化し、消化器の活動が低下するとともに、アドレナリンの影響
で血糖が上昇するためと考えられますが、最近では、消化管から分泌されるホルモン(消化管ホル
モン)が深く関係することがわかってきました。
消化管ホルモンには多種ありますが、特に胃から分泌されるグレリン、小腸から分泌されるペプチド
YY(PYY)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)などが注目されています。
グレリンは、空腹になると分泌され、食欲を増進させるとともに、脳下垂体からの成長ホルモン分泌
を促進します。
一方、PYYやGLP-1は食欲を低下させるはたらきがあります。
上の実験で、経時的にこれらの消化管ホルモンの血中濃度を測定すると、運動直後にはPYYと
GLP-1の濃度はともに上昇し、それが運動後約1時間にわたって持続すると報告されています。
一方、グレリン濃度は運動直後に低下し、運動後1時間で元のレベルに回復します。
したがって、運動によるこれらの消化管ホルモンの変化が、食欲を低下させ、食事量を減らす効果
をもたらすものと考えられます。 (③へ続く)
石井直方 東京大学大学院教授 理学博士
Kentaiニュース195号(2011年4月発行)より転載
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