高齢者の転倒とロコモ
現在、高齢の方が要介護になる原因の第1位は脳卒中(29%)ですが、第4位に転倒・骨折があり、その割合は約11%、数では年間約12万人に上るとされています。
転倒に関連する要因にはさまざまなものがありますが、アメリカ老年学(2001)の調査によれば、最も影響の強い要因が筋力低下で、バランス障害、関節炎などが続きます。
こうした流れを受けて、2007年に、「ロコモティブ・シンドローム」(通称「ロコモ」)という病名が提唱されました。
日本語では「運動器症候群」といい、「筋、骨、関節などの運動器の障害や機能低下により、要介護となるリスクの高まった状態」と定義されます。
したがって、介護予防のためには、これらの運動器の機能を、なるべく早いうちから維持・向上することが重要です。
しかしこの場合でも、中心となるのは、「足腰体幹」で、上半身の筋力はあまり関係ないように見受けられます。
実は、上半身の筋力は、「転んでしまった」ときに威力を発揮します。(③へ続く)
石井直方 東京大学大学院教授 理学博士
Kentaiニュース197号(2011年11月発行)より転載
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