人生を充実させたもう一つのチャレンジ |
自分に挑み、コンテストで勝ち取った“心の勝利” イアン・ディアック Ian Diack 私が体づくりのトレーニングを始めたのは1991年、14歳のときだった。どこにでもいるような、ごく普通のやせた子どもで、体を大きくしたいと思ったのだ。ウエイト・トレーニングは、“大男たち”のような大きな筋肉を手に入れるための“切符”となった。ウエイト・トレーニングによって、充実感も味わうことができた。トレーニングは私にとって、「特別なもの」となったのだ。 父も私の努力を応援し、かつて自分が使っていたウイダーのバーベル・セットを譲ってくれ、さらに空箱2つと板を材料に、ベンチを作るのも手伝ってくれた。たったこれだけの基本的な器具と、『Muscle & Fitness』誌で知ったテクニックを使って、私は全身を鍛える方法を学んでいった。 中学の体育の授業でウエイト・トレーニングが始まったとき、私の熱意に気づいた体育の教師は、他のスポーツではなく、ウエイト・トレーニングに専念することを許可してくれた。こうして私は着々と進歩を遂げていった。両親、友人、教師たちから励まされ、さらに前進を続け、やせた体にはしっかりと筋肉がついていった。 そうするうちに、私はよく、自分の体の変化について質問されるようになった。たくましい体をした“ビッグ・ガイ”として知られるようになっていったのだ。自尊心と自信も、体の成長に負けないスピードで急速に強まっていき、ウエイト・トレーニングを通した体づくりはこの先もずっと続けていくだろうと考えていた。 目標をめざして計画を立てる 私はウエイト・トレーニングが役立つスポーツを始めるようになった。ボクシングやフットボール、パワーリフティングの他、スコティッシュ・ハイランド・ゲームズ(力技を競う「ストロングマン競技」の一種)にも挑戦した。だが、私が本当にやってみたかったのは、未経験の「ボディビル」でコンテストに出場することだった。目標を立て、それを達成するという充実感、それまでで最高のシェイプをつくり上げてステージに立ち、競い合う喜びをどうしても味わってみたかったのだ。 そんなある日、鏡の前に立った私は、自分が長い間かかって築き上げてきた体を見つめた。確かに、体は大きい。だが、カットがなく、“ボリューム”があるだけだ。ボディビルダーというより、パワーリフターの体型に近かった。力はあるが、脂肪も多く、引き締まった体ではなかったのだ。このとき、今こそ自分の真価を試すときだと思った。 そこで、1999年カナディアン・ワールド・ボディビルディング・コンテスト予選への出場を決意した。カナダではトップ・レベルのナチュラルビルダーが集まるアマチュア・コンテストだ。しっかりした計画がなければ、いくら目標を立てても、夢物語に終わることはよくわかっていた。忍耐と、目標とする結果を具体的にイメージすることが必要だった。そして私は自分自身にチャレンジを課し、自分の限界を試し、徹底的に努力する決意をした。 コンテスト出場のために私が立てた計画は、ボディビルとフィットネスの2人の優秀なトレーナーから指導を受けることだった。ブライアン・ローグとその妻、IFBBプロ・ボディビルダーのダナ・ローグだ。豊富な知識と経験をもつこの夫婦のおかげで、私は食事とポージングでみるみる進歩を遂げていった。だが、いくら指導がよくても、最終的に成果が得られるかどうかは私にかかっている。私は自分に対して、体を変え、健康的なライフスタイルを実践することによって得られるたくさんの効用について常にいい聞かせた。そのおかげで、私は食事で一度もチーティングをすることはなく、18週間も経つ頃には、初出場のコンテストに備えて本格的な“バトル”に臨む準備がしっかりと整っていた。 素晴らしい体と自信を得る 1999年9月11日、私は初めてのボディビル・コンテストに出場した。まるで、初めてバーベルを持ち上げたときのような気分だった。トレーニングを始めた日から、毎日がすべて、この特別な日のための準備であったように感じたのだ。コンテストに備えて、私は体重を40ポンド(18.1kg)以上も落とし、体脂肪率は16%から6%へ減らし、マスキュラリティも格段に向上させていた。体が締まってカットがつき、強くなり、自信がついた。だが、何よりも大きな満足感があったのは、自分の目標を達成したことだった。このコンテストでは優勝はしなかったが、私はまるで、優勝したも同然のような気持ちだった。自分の夢を追い、それに向かってあきらめずに努力を続けることができたからだ。 現在、パーソナル・トレーナーとして働いている私は、どのようにして今の体をつくり上げたのかと、よく尋ねられる。私の現在の目標は、そうした質問をする人たちみんなに、これまでの自分の経験で得た知識や喜びを伝えることだ。コンテストに出場するかしないかに関係なく、誰でも自分の体や考え方、生活をよりよい方向へ変えていくことができる。私たちは誰でも、自分の未知の能力に挑み、本当の実力を問うことができるのだ。私はそれにチャレンジした。そして、それは、あなたにもできるのだ! [『マッスル・アンド・フィットネス日本版』2000年10月号にて掲載] |
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